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第4回 回転翼機パイロット

航空自衛隊でパイロットになりたいと思った場合、将来乗ることになる機種(戦闘機、輸送機、救難ヘリその他)にかかわらず、途中までの課程はいっしょである。
高卒の場合は航空学生として2年間勉強する必要があり、大卒(一般大学もしくは防衛大)の場合は一般幹部候補生課程(自衛隊の幹部については後述)で6〜10ヶ月間+隊付教育(部隊実習)で2ヶ月間勉強する必要がある。
それからフライトシミュレーターでの訓練、小型プロペラ機T-3での実際の飛行訓練などを約12ヶ月経たあとに、将来乗ることになる機種によって別々の訓練の道に分かれる。




救難隊に進むことになった場合は、訓練用ジェット機T-400での訓練が約13ヶ月行なわれる。そして実際に任務で乗ることになるUH-60JヘリコプターかU-125Aジェット機のどちらかの道に分かれて、その機体による訓練が小牧基地で4〜6ヶ月行なわれる。実は救難ヘリのパイロットになる人間は、この段階で初めてヘリコプターを操縦することになる。
これを経てついに実際に救難機部隊に配属されることになるのだが、当然それまでにさまざまな理由で脱落することがある、困難な道程である。

ここからは、UH-60Jヘリコプターのパイロットに話を絞りたい。
小牧基地での訓練を経て、全国各地の救難隊に実際に配備されたとしても、この段階ではまだ実際の救出任務に出動することはできない。まず各基地での約6ヶ月間の訓練で「初級OR(Operation Readiness)」と言われる「昼間であれば機長として任務に就く資格」を獲得しなければならない。

救難ヘリの機長は、ただのヘリコプターパイロットとはわけが違う。その任務の特性上、危険な低空を飛ぶことが非常に多いし、ヘリコプターのローターが発生させる下降気流の影響を最小限に抑えて、遭難者の救助活動に影響が出ないようにする飛行テクニックなどが必要となる。また、例えば天候が悪化した場合、遭難者の捜索を続けるのか引き返すのかといった、救出任務における最終決定も機長が下さなければならない。いわば遭難者だけではなく、ヘリの乗員全員の命を預かる立場になるのだ。

初級OR取得からさらに2〜3年の訓練を経て「中級OR」と言われる「夜間の任務に機長として就く資格」を獲得する。夜間飛行とは、一般に知られている以上に危険なものである。夜間は当然視界が悪いため地上が見えにくくなる。そのため高度計などの計器に頼りながらの飛行を行なわなければならないが、単純に高度計で高度○メートル以上を飛べば安全などという世界ではない。土地にはもちろん起伏があるし、低い高度を飛ぶ救難ヘリの場合、鉄塔やビルなどといった障害物が夜闇の中から突然現われる可能性も高く、遭難者を捜すことに気を取られすぎると死を招く。さらに中級ORでは、別の救難ヘリコプターや捜索機U-125Aを指揮し、共同で救難捜索活動を行なう能力も求められる。

さらに「上級OR」というものも存在する。これは習得に4〜5年かかると言われる非常に高度な資格で、高山岳集合訓練を終了している必要がある。空気が薄いためにエンジンの出力(燃焼効率)が落ちる上、天候も気流も不安定な高山での任務はさらに危険となるからだ。

このように、実際に部隊に配属されても訓練また訓練の日々となる。さらにORの資格を取ることができずに操縦士を解任されることもある、非常に厳しい世界である。



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資料協力:「コンバットマガジン」編集部
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